料理撮影の現場にはときおり、背筋が伸びる一皿が現れます。
このトリュフオムレツは、まさにそれ。
漂っていたのは、ただならぬ芳醇な香り。
レンズ越しにその香りを写せないのが悔しいほどでした。
一見はスクランブルエッグでも、黒トリュフが加わることで、その表情は一変します。
卵はまるで、香りを包むクッションかのように…
シンプルな構成だからこそ、卵の火入れ、質感、そして盛りつけのバランスが問われる料理です。
フードコーディネーターは、卵の鮮度やバターの風味はもちろんのこと、トリュフの厚みには特に気を配りました。
スライスしたトリュフを花びらのように散らすことで、視覚的な美しさと高級感を演出。
この器を選んだのは、黄色との補色効果で料理をより際立たせるため。
撮影する私は、黄身のとろみが一番美味しく見えるアングルを探し、トリュフの艶を引き立てるようにライティングします。
卵のやわらかさとトリュフの繊細な質感。
そのどちらもが犠牲にならないように、スプーンでそっとすくい上げた一瞬を切り撮った渾身の一枚です。
写真から黄身の濃さと香りまで届くことを願って、被写界深度は浅めに、ホワイトバランスはわずかに温かく設定しました。
料理写真は、その一瞬の美味しさを永遠に残せるアートなのかもしれません。